身長を伸ばす方法【鉄編2】鉄製の鍋を使うと背が伸びる!?身長先生が3つの論文を解説!
医師医学博士、整形外科専門医の田邊です。
今回のテーマは、身長を伸ばす方法鉄編です。
以前も鉄編の動画と記事を出していますので、第二弾になりますね。
前回の記事を確認していない方はこちら。
>> 身長を伸ばす方法【鉄分】編!関係性を論文を用いて解説!
続編という形で2023年3月の最新情報を皆さんと共有していきます。
概論
まずこの70年間で日本人の平均身長何cm伸びたでしょうか。
いつもお伝えしている内容なので、ご覧いただいている方は知ってると思います。
1950年の日本人の平均身長
男性:161.5cm
女性:150.8cm
2021年の日本人の平均身長
男性:171cm
女性:158cm
男性であれば10cm弱、女性であれば7cm程度身長が伸びた、というのがこの70年間になります。
この70年間で何がそういう風に身長大きく改善したのかという風に言われれば、明らかに栄養の改善だと考えております。
その中で改善すべき栄養素として重要な項目はタンパク質が重要でしょう、そういったお話も過去に何度もしております。
それに対して亜鉛も大事だとか、そういったこともお伝えします。
さらに重要なポイントとして、現在で「最も重要な要素は何ですか」と聞かれれば、鉄という風に答えております。
鉄に関してはミネラルということで、亜鉛も非常に私の動画では人気ですけども、それに匹敵するもしくはそれ以上に重要な要素として現在考えております。
実際に治療に来ていただいている方に関しても、積極的に鉄を処方しているわけなんですけども、鉄にはどういったデータがあるのか、それを一緒に見ていきたいと思います。
鉄とは何か
まずは前回の復習からしていきたいと思います。
そもそも鉄ってのは何かっていうところを見ていくのですが、前回の動画でもお伝えしています、「鉄で身長が伸びるのか本当か、副作用に注意」という内容で動画でもお話ししています。
その中で論文を紹介します。
Linear Growth in Children with Iron Deficiency Anemia Before and After Treatment
引用元:Journal of Tropical Pediatrics
鉄欠乏性貧血のお子様に鉄を治療してどうなったかという内容です。
これは大体1歳半くらいのデータの子になりますけども、鉄が欠乏した状態だと年間成長率が7.5cm、それに対して鉄をしっかり補充していくと13.2cmまで改善したということで、鉄が欠乏した状態から鉄欠乏を改善すると、成長率は1.76倍にもなる。
逆の表現を使うと、鉄が欠乏してしまうと1.76分の1になってしまう、というところになりますので、ぜひそういったところを改善していくと身長にとっていいでしょうというところになります。
ですので、この70年間でもしかしたら大きく改善したのは「鉄」なのかもしれない、というのがここから1つの推察が立つわけになります。
これは1つの論文というところで、他の要素で少し見ていきましょう。
なぜ鉄が重要なのか
例えばですが、どうしてそもそも鉄が重要なのか、そういった議論も出てくると思います。
これに関して明確な答えがあるわけではないので、これ1つの私の推察、アセスメントですね。
そういったものを皆さんに共有させてもらいたいと思います。
WHOの貧血の基準値を共有していきたいと思います。
貧血はヘモグロビンという値で評価されます。
日本語だと「血色素測定」そんな風に表現しますけども、その値が年齢によって基準値が違います。
ヘモグロビン濃度の基準値(g/dl)
5歳未満:11
12歳未満:11.5
15歳未満:12
成人:13
このように段階を踏んで基準値は異なっていきます。
これはどういう意味かというと、基本的に小さい子供の方がヘモグロビン値は低い、という意味になります。
このヘモグロビン値は徐々に徐々に上がっていきます。
その上がっていくという過程の中で、当たり前なんですけども鉄を消費しながらヘモグロビン値は改善するという表現も使えることできますし、大人になっていくそういった表現もできると思います。
ですので、こういったデータからは漠然と大きなマクロの視点から見ても、鉄は成長にとって非常に重要ということがわかってきます。
では前回の論文に加えて、今回は2つ論文を用意しましたので、一緒に見ていきましょう。
1つ目の論文
Zinc and iron status and growth in healthy infants
引用元:European Journal of Clinical Nutrition
ということで、D Bougle先生というフランスの先生が書かれた論文で、2000年のEuropean Journal of Clinical Nutritionの雑誌に載っています。
正常な幼児の亜鉛や鉄の血中濃度などが、成長とどういう風に関係があるのかを検討している論文になります。
ここからお伝えしている通り、2018年の亜鉛欠乏症の診療指針によれば、いろんな論文において亜鉛が重要だと言われていますが、鉄はどうなの?というところでそういったところも見てる、そのようなイメージ感でしょうか。
【調査対象】
3歳未満の子供66人
【調査内容】
亜鉛・IGF-1・鉄の濃度など
これを見てみると衝撃的なんですけども、亜鉛はそんなに成長に関係がなかったということで、この論文上では亜鉛はあまり関係がなかったということですね。
皆さんも混乱しがちになると思います。
全ての論文で全て同じことが書いてあるって事はないです。
例えばこのAっていう論文では亜鉛は良いと書かれているけど、Bっていう論文では亜鉛は良くないよと書かれている、そんなことよくありますのでそういうのは気にしないでください。
「良い」という風に書いてある論文が100個に対して、「悪い」と書いている論文が1個であれば、おそらく100個の方が正しいでしょう。
ただし科学とかこういったもので超面白いところが、その100対1がいつか形成が逆転するなんてこともあるので、そういったところも踏まえて我々専門家は1個の論文に目を傾けることもしばしあります。
ただしこのZinc(亜鉛の研究)に関して言うと、あまり関係がなかったというのは、おそらく統計学的に有意差が出なかっただけであって、決して「亜鉛が不要」という風な表現になるような文章ではないと私は考えます。
それに対してなんですけども、鉄は成長の程度に関していうと、フェリチンの値から非常に関係性があったということです。
フェリチンは鉄の指標になっています。
鉄は非常に多くの指標を持っています。
指標を持っているというのは、鉄を評価する採血項目を持っている、ということです。
例えば一番わかりやすいのは、血清鉄(血中の鉄の濃度)とかですね。
ただし血中濃度の鉄は非常に変動性が強いです。
それに対してフェリチンは貯蔵鉄となります。
貯蔵鉄と血清鉄は何が違うのという簡単な説明をさせてください。
皆さんはいくらお金を持ってますか?
急にお金の話でびっくりされたかもしれません。
あなたがお金持ちかどうか調べる時に、財布の中のお金をチェックする、これは1つの方法だと思います。
ただしもっとあなたがお金持ちかどうかを見るときは、ズバリですけど銀行の口座にいくらお金が入っているかを調べるとわかります。
それが貯蔵鉄と血清鉄の違いになります。
血清鉄は財布の中のお金なんです。
多く入ってる時は多く入ってるし、少なく入った時は少なく入っていて、結構変動が強いです。
ただし銀行のお金はある程度一定で保たれていますよね。
貯蔵されている鉄も同じことが言えます。
そういった鉄を評価する時は、フェリチンが有効だという風に言われます。
色んな論文を見てみると、フェリチンで評価されていることが多いです。
それで私はよくフェリチンという値を元に、鉄が体内にどれぐらいあるかというのを評価しています。
ということで、2000年に出たフランスの論文によれば、正常な幼児に関して言うと亜鉛よりも鉄の方が成長に非常に影響があった、ということで鉄は重要なポイントになっています。
2つ目の論文
今の論文に加えてもう1つ別の論文を紹介していきます。
1999年のLancetと呼ばれる非常に有名な論文であり、カナダのAdishさんという方が書かれています。
Effect of consumption of food cooked in iron pots on iron status and growth of young children: a randomised trial
引用元:THE LANCET
Potsは鍋のことです。
鉄製のpots(鍋)を使ったらどうなったのか、みたいなところですね。
どういった条件でこういった論文が行われているかというと
In less-developed countries, novel strategies are needed to control iron-deficiency anaemia, the most common form of malnutrition.
ということで、いわゆる発展途上国の場合では栄養失調というのが問題で、鉄欠乏性貧血を予防する時どうしたらいいのか、というのを検討している話になってきます。
【調査対象国】
エチオピア
【調査内容】
鉄製の鍋を使っている家族とアルミニウム製の鍋を使っている家族を比較
【調査大賞】
407名の子供
結果を見ていくと、ヘモグロビン濃度(貧血の濃度を示す値)を見てみると、鉄の鍋を使ってる方が貧血の割合が低くて、ヘモグロビン値が高かったという結果が出ています。
こういったところから見てみると、鉄製の鍋の使用はアルミニウム製の鍋よりも、貧血を予防して成長に対して良好でしょう、という結論が出ています。
そういった結果を元に実験室で研究したそうです。
その結果、鉄の鍋で調理した方が結果が良好だった、というところになってきます。
つまりこういった結果から見てみると、発展途上国においては鉄製の鍋の使用は鉄欠乏性貧血の予防に有効かもしれない、という内容になってきます。
2つの論文のまとめ
今回は2つの論文を示させていただきました。
1つ目の論文は、亜鉛よりも鉄の方がより重要で、そもそも亜鉛というのは2018年の亜鉛欠乏症診療指針において重要だと言われていますが、それよりもさらに鉄の方が重要だという論文でした。
2つ目の論文では、鉄製の鍋を使ってる家族の方が鉄欠乏性貧血の割合が低く、そしてその彼ら(鉄製の鍋を使用)というのは、成長の程度はアルミニウムの鍋を使っている人たちよりも良かったというところでした。
ここから見ても非常に鉄がいいということがわかると思います。
皆さんも参考になったでしょうか。
鉄が含まれる食材
最後に鉄が含まれる食材を紹介します。
まず鉄は2種類あり、ヘム鉄と非ヘム鉄と呼ばれるものがあります。
ヘム鉄はどちらかと言えば肉っぽいものに含まれます。
・豚のレバー
・カツオ
・イワシ
・マグロ
それに対して非ヘム鉄は
・ほうれん草
・しじみ
・アサリ
・卵
など、草っぽいとかそういったところですね。
実は非ヘム鉄よりもヘム鉄の方が吸収率が高く、ヘム鉄は15%に対して非ヘム鉄は5%ぐらいの吸収率だと言われていますので、肉っぽい鉄の方が3倍も吸収率が高いということになります。
身長を伸ばしたい人に関して言うと、ぜひ豚のレバー・カツオ・イワシ・マグロなど、そういったところを摂取されていただくといいのではないでしょうか。
まとめ
参考になりましたでしょうか。
前回の記事を確認していない方はこちら。
>> 身長を伸ばす方法【鉄分】編!関係性を論文を用いて解説!
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