論文で考える身長を伸ばすのに最も適切な運動とは?【身長先生38】
今回お話しさせていただくのは、身長先生に聞けPart38ということで、久しぶりに皆さんからいただいた身長に関する質問に答えていきたいと思います。
- Q1.どの運動が1番身長が伸びますか?
- Q2.炭酸飲料は身長の伸びにマイナスですか?
- Q3.頑張り次第で身長予測より高くなる?
- Q4.足のサイズは身長の伸びに関係ありますか?
- Q5.晩熟の場合の成長シートの角度は?
- まとめ
Q1.どの運動が1番身長が伸びますか?
どの運動が1番身長が伸びますか?
A.
まずは身長を伸ばす上で、生活習慣が大事ってことをよくお話ししています。
睡眠・運動・食事ですね。
その中で大きなパートを占めるのが運動になります。
ではなぜ運動が大事か?
健康な人と不健康な人でどっちの方が身長が伸びますか?
これは健康な人の方が身長は伸びます。
では次の質問。
運動習慣がある人と運動習慣がない人、どちらの方が健康ですか?
これも運動している人です。
非常にシンプルに考えても、運動をして健康体になると身長にとっておそらくプラスに働くということが、お医者さんじゃなくても分かることです。
その中で具体的にどうしていいのか、ということを少し検討していくような形になります。
運動をするとその後食欲が湧いたり、寝付きが良くなったりするので、運動をして食事の摂取が進めば栄養吸収にもおそらく良いと考えられます。
また、睡眠の質の向上にもつながるわけです。
睡眠の質が向上することにより、成長ホルモンを分泌するわけになりますので、そういった意味だと運動することが望ましいでしょうという表現になると思います。
今回いただいた質問、「どの運動が一番身長が伸びますか?」ということで、これはかなり難しいです。
上記では運動の良い話ばかりさせていただきました。
その中でマイナスの側面もあるかなという風に考えられます。
例えばかなり運動のボリュームが多い子、私の患者さんの中にも結構いらっしゃいます。
プロスポーツ選手を目指していたり、オリンピック選手を目指していたり、そういったお子さんもいらっしゃいます。
そういった子はかなり練習量が多く、多すぎるという表現もできるかもしれません。
それによって少し栄養状態が欠乏に傾いている印象がある方もいらっしゃいますので、そういった意味だとマイナスに働く可能性があるでしょう。
運動したらその分だけ栄養を摂取することが大事になります。
その他にマイナスの側面として考えられるのが、栄養を摂取した場合、経口で口から栄養を摂取した時に、
・脳みそ
・筋肉
・骨
・神経
・皮膚
など、色んなところに栄養が行きます。
当然ですが身長という側面だと骨に行ってほしいわけです。
それが例えばむちゃくちゃ筋トレをして筋破壊、筋肉が破壊した状態に陥った場合はおそらくその破壊した部分を「レスキューしに行こう」「助けよう」という働きが体で行われるはずです。
なので摂取したエネルギーが筋肉に届いていく場合は、もしかしたら身長にとって良くないのかもしれない、というような発想ができるわけですね。
そういった側面からいくと、運動は大事ですが筋破壊は起こさずに運動したい理由、成長ホルモン分泌ということですね。
成長ホルモン分泌をさせることが1つの運動の目的だとすれば、成長ホルモンの分泌量が最大になるような運動を選択し、なおかつ筋破壊が過剰に起きない、もしくは起きたとしても別にその分だけ栄養を補充してあげれば理論上はいいのかなと思います。
ということで今回お話しさせていただくのが、成長ホルモンをMAXに分泌させる運動の種類です。
今回論文を2つ紹介しようと考えています。
1つ目です。
The impact of sex and exercise duration on growth hormone secretion
引用元:Journal of Applied Physiology
エクササイズ(運動)したら成長ホルモンを分泌するのはほぼみんなが知っている事実の1つだと思いますが、それに対してどれくらい行う必要があるか、ということを検証している論文になります。
2006年に発表された論文で、アメリカのノースカロライナの大学の先生が書いてくださった論文になります。
こちらの論文のグラフを見ていただきたいと思います。
図1
男性のグラフと女性のグラフがあります。
こちらのグラフを見てみると、
- 縦軸:GH=growth hormone
→成長ホルモンの分泌量 - 横軸:Time
→運動をした時間
このような事を表しているグラフになります。
まずは女性のグラフを見ていきます。
図2
◆が30分運動した人
■が60分運動した人
●が120分運動した人
ということで、どれが大きな山を築いているかを見てみますと、120分の人が一番大きな山を築いています。
ですのでこの点からいくと、30分より60分、60分より120分運動した方がいいでしょう、というようにご理解いただけるといいと思います。
簡単にまとめますと、運動時間による成長ホルモン分泌は以下のように表すことができます。
30分<60分<120分
ただし60分と120分は運動量の差に比べて、分泌量に大きな差はないということで、分泌を迎えるのは少し遅れて出てくるところから、
①ある程度まとまったボリュームの運動をする必要がある
②運動量と分泌量のバランス的に、60分ぐらいが適正と思われる
このようなことが言えます。
男性のグラフも見ていきましょう。
図3
まず◆が30分で一番小さな山、そして■が60分運動した人、最後●が120分運動した人ということで、男性の方が60分と120分の分泌量の差が大きいのが分かります。
これは大人のデータになりますので、身長を伸ばしたいお子様にとってどれくらい当てはまるかはまた別の話になりますので、そこを十分ご理解いただく必要があると思います。
ただこちらも同じようなお話しをお伝えすることができるのではないでしょうか。
運動時間が長い方が、成長ホルモンの分泌が多いのが分かると思います。
ということで、まず1つ目の結論としては運動の時間はある程度継続した方が効果的ということが分かりました。
おそらく今回はそれに加えて種類を聞きたいわけですね。
例えば
・バスケットボール
・筋トレ
・水泳
など、そういった質問だと思います。
この論文からは時間が大事ということは分かりました。
残念なことに全てのことを説明できるわけではなく、私もできるだけそういったデータに基づいて少しお話しさせていただきたいと考えています。
次に別の論文を見ていきましょう。
60分運動しようってことがよく分かりましたが、それに対して次の論文が、
The effect of exercise type on immunofunctional and traditional growth hormone
引用元:European Journal of Applied Physiology
ということで、どんな運動(エクササイズ)のタイプが成長ホルモン分泌にはいいのか、こういったことを検討した論文があります。
先ほどの論文と同じ研究グループの先生たちが出してくださった論文が2007年に発表されています。
これはどういう比較をしたかというと、当然成長ホルモンが分泌されるのは当たり前ですが、その次に「70% of VO(2max) cycling」(運動強度が高いサイクリング)、つまりきつめの運動をさせた群と、間欠的にフリーウェイトのスクワットをやらせた群の2つに分けて、成長ホルモンの分泌がどうなったか検証しています。
結論からいうと、間欠的にフリーウェイトのスクワットをやらせた群の方が、成長ホルモンの分泌量が多かったという記載があります。
先ほどの論文からは60分以上の運動が効果的というのが1点と、次はこちらの論文を見てみると自転車などの運動よりも筋トレの方が成長ホルモン分泌量が多いというような表現になります。
ということでここから分かることとしては、成長ホルモンの分泌を最大にさせるのであれば、間欠的な筋トレを60分以上やるということで、めちゃくちゃ辛いですよね。
そんなのできるのかと思いますが、そういったような形になります。
ただし先ほどお伝えした通り、筋トレというのは筋肉を破壊する作業を行うわけですから、そうすると栄養を摂取した時に筋肉に持っていかれやすいことを考えると、筋トレばかりすると骨の栄養が欠乏しやすくなるかもしれないという仮説が立てれますので注意が必要です。
かなり回りくどくなってしまいましたが、皆さんに正確な情報をと思って説明すると、どうしても回りくどくなってしまいます。
そこはごめんなさい!
今のが論文的な解説になります。
それに対して私個人の見解に関して言うと、まずは好きなスポーツをやりましょう!
それが第一だと思います。
なぜかと言われれば、単純な60分間の成長ホルモン分泌量とかよりも、1ヶ月・数ヶ月・1年・2年・3年というように身長は長期戦なんですね。
長期戦になった時に好きじゃないスポーツをやるのは不可能です。
なので好きなスポーツをやるのが最も大事です。
一番大事なのはスポーツをしているか・していないか、この方がよっぽど影響力が大きいので、長期的に続けられるように自分が好きな運動・スポーツを選んでいただけると良いかと思います。
その中でも、成長ホルモンだけを考えれば筋トレは単純な有酸素運動よりもおそらくは成長ホルモンの分泌量が多くなるかもしれませんが、総合的に考えるとどちらかというと全身運動の方が私は適切なのではないかと、現時点では憶測を踏まえてですけどもそういう風に考えています。
・サッカー
・バスケットボール
・野球
・卓球
・ランニング
など、全身運動のスポーツを是非選択していただくと良いのではないでしょうか。
Q2.炭酸飲料は身長の伸びにマイナスですか?
いつも楽しみにしています。
質問です。
炭酸飲料(コーラなど)やジュースなどは身長の伸びにマイナスですか?
どのように影響を与えますか?
A.
良い質問ですね。
私が小さい頃は「コーラを飲むと骨が溶ける」なんて説明を受けました。
今思えばアワアワの感じがいかにも物を溶かしそうというイメージですかね。
あとは子供の教育で昔は少し怖いことを言って、健康的な生活を誘導するようなことを説明していたかなと思います。
今の時代はもうちょっと自然体の説明をする機会がおそらく多いのではないかと思います。
この内容に関して言うと、コーラとジュースの悪い点、あまり私の口から言うべきではないですが、強いて言えば明らかに糖分ですね。
糖分をたくさん摂取することが身長にとって良いかと言われれば、もちろん欠乏するのはいけませんが今の世の中で欠乏するなんてことはないわけですから、そういった意味ではあまり直接的な因果関係はありませんが、積極的に摂取する飲み物ではないでしょう。
マイナスという表現もちょっと厳しすぎるかなと思いますが、推奨されるような飲み物ではないと思います。
Q3.頑張り次第で身長予測より高くなる?
モニターさんと同じような年齢、同じような早熟グラフになっているため参考になります。
先生のお話しされている睡眠時間や運動食事など気を付けています。
骨端線などの検査でもう閉じかかっている場合でも、先生の病院に通って治療をしたら予測より何cmくらい身長が高くなる可能性がありますか?
通院や日々の地道な努力では予測は変えられないものですか?
ご回答いただけると嬉しいです。
A.
骨端線が閉じかけている、これもどれくらいの評価になってくるのでしょうか。
私の考えで骨端線が閉じかけている年齢だと、ねじ曲げられる身長でいうと大体+1〜4cmぐらいは最終予測より伸びる可能性はあると思います。
地道な努力で変えられるか?ということですが、こういった地道な努力だったり色んなことを頑張っていただいて、最終予測+1〜4cmを目指すのが思春期の後半の目標となります。
Q4.足のサイズは身長の伸びに関係ありますか?
足のサイズは身長の伸びに関係ありますか?
A.
この質問のほとんどの意味というのは、例えば同じ150cmの男の子同士が並んだ時に、他の150cmの子より足が大きい、だから将来身長が大きくなるんじゃないか?と期待しているわけですね。
それに関していうと、そういった期待はある程度してもいいと私は思います。
これはAならばBが成り立ったら、BならばAが成り立たない。
成り立たないんですよ?
そういった意味だとこの論拠っていうのは、大人は手や足が大きい人の方が身長が高いという相関図が間違いなくあります。
例えば一番分かりやすいのだと、男性と女性だとどちらの方が身長が高いですか?というと、男性の方が身長が高いですよね。
どちらの方が足が大きいですか?というと、明らかに男性の方が大きいですよね。
そういった意味からも、大人のレベルで見た時は足のサイズが大きい方が身長が高い傾向にあるわけですから、足のサイズと身長はある程度何かしらの関係性があるわけです。
なので子供においても逆算的に考えれば、ある程度関係性があると考えられます。
ただし先ほどお伝えした大人で成り立つことが、子供の最終予測に関係があるかというと、現時点だとそういった予測は使っていません。
しかし今後こういったデータが多く出てくれば、最終予測に使うこともできると思います。
ただなかなかそういったデータが出てくるのは難しいかもしれません。
Q5.晩熟の場合の成長シートの角度は?
成長シートの折返しの角度ですが、晩熟の場合も逆の角度形成がありますか?
息子は13歳ですがまだ成長期が来ていないようで、成長シートでは少しずつ左に降りていっています。
成長期が来たら右へ降りていきますよね?
その時は「くの字」を描くのでしょうか?
気になります!
A.
その通りだと思います。
基本的にはここを反転するというような理解は、晩熟でも有り得ると考えています。
それは統計学をご理解いただくと、一応ご理解いただけます。
例えば10歳の男の子が成長シートで真下に降りていくのが平均なわけです。
早熟だと「>」こういう風になるわけですから、それと同じように晩熟の子がいて、さらにその成長シートが真下に降りていく表が形成されるということは、「>」の逆パターンが成り立つから、真下に向かう表が成り立つわけです。
少し説明するのが難しいですが、簡単に言うと「それは有り得ます」とご理解ください。
ただし、早熟だと厳しいかく角度を形成することが多く、晩熟だとそこまで戻らず緩い角度を形成する印象があります。
これは統計学とは別の話で、私が個人個人のデータを今まで見てきた中の感想としてはあるかなという答えもできると思います。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
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