【身長を伸ばす】ビタミンDは外で遊ぶと出やすい!?論文を用いて解説【身長先生】
医師医学博士整形外科専門医、身長先生こと田邊です。
今回も全身全霊で身長に関することを配信していきます。
今回のテーマは、「ビタミンDは身長を伸ばすのに必要か」についてお話させていただきたいと思います。
2024年2月22日に「すごい身長の伸ばし方」という本が出版されています。
こちらの本では、今回お話させていただく「ビタミンDについて」もお話させていただいています。
ぜひこちらの本もご参考ください。
113ページからの「カルシウムの吸収を助けるビタミンDとは」という部分にビタミンDのデータがありますが、さらに新しいデータを見つけてきました。
今回そちらを皆さんと共有させていただきたいと思います。
本をまだ買いたくないという方もいらっしゃるかもしれません。
そういった方は、過去に配信済みの「ビタミンDでO脚に効果が?副作用に注意」という動画もぜひご参考ください。
【目次】
ビタミンDは身長を伸ばすのに必要か
ビタミンDは身長を伸ばすのに必要かというと、結論としてビタミンDは身長にとってすごく重要です。
特に、2月~3月などといった寒い時期に外で遊ぶことが重要になります。
画像1
今回紹介させていただく論文は、「Nutrients」という雑誌名の2022年に発表された論文です。(画像1)
著者は熊本大学の倉岡先生で、「Impaired Height Growth Associated with Vitamin D Deficiency in Young Children from the Japan Environment and Children's Study」というものになります。
こちらは「ビタミンDの欠乏と身長の伸びを比較した論文」です。
とても面白い論文なのですが、次項で少し内容を見ていきましょう。
ビタミンDの欠乏と身長の伸びを比較した論文を詳しく解説
まず、今回はこの論文がなぜ行われたのかという部分を見てみましょう。
論文が発表された理由について
ビタミンDはカルシウムの吸収や骨の恒常性の維持に必要不可欠です。
そのため、「身長が低い子たちはビタミンD濃度が低い」というように言われているのですが、今回の論文ではそれが本当なのかという部分を見ているという形になります。
皆さんにもぜひ覚えておいていただきたいのですが、実はビタミンDは身長と深く関係があります。
過去に私が「ビタミンDと身長は直接関係ない」というようなお話もさせていただいたことはありますが、今は論文にも「ビタミンDと身長は関係がある」というデータが出てきていますので、完全に修正させていただきます。
そのため、ビタミンDは積極的に摂取してください。
当院の栄養補充療法に関しても、ビタミンDの血中濃度をかなりの高濃度で保っているような形になっています。
論文のデータを見る際にポイントとしては、身長が低い子のデータが日本のデータなのかという部分も見て評価していくということになります。
画像2
今回のデータの良い点は、3624人のデータを参考しているところです。(画像2)
なんと10万人の登録(enroll)があり、そこから5000人へ絞り、最終的に3624人となったそうです。
このようにかなり大きいデータということで、そういった意味でも信憑性が非常に高いと思われます。
論文の調査内容とは
今回の論文の調査内容は、以下になります。
- 生まれた時の身長と体重
- 2歳の身長と体重
- 4歳の身長と体重
上記のデータに対して、4歳の血中濃度ビタミンDを見て今回の評価がされています。
論文の調査結果とは
論文の調査結果は、結論として、「23.1%のお子さんがビタミンDが不足していた」という結果でした。
割合として、約4~5人に1人ぐらいになります。
我々の方でも毎日患者さんが来たら採血をしているのですが、当院のデータでも同じように欠乏している傾向が見られています。
結論についてさらに詳しく見ていくと、さらに1.1%のお子さんに関して、ビタミンDの重症欠乏であったというデータとなっています。
欠乏については、以下が定義となっています。
- 欠乏=20ng/mL
- 重症欠乏=10ng/mL
当院のデータでも同じように、約1.1%は重症欠乏の傾向となっています。
ここで少し我々の経験を踏まえて、論文の内容ではなく私からコメントを出させていただくと、
「ビタミンDが欠乏している子は大体他の栄養素も悪い」
ということです。
亜鉛や鉄などの他の栄養素も悪いことが多いです。
ここでさらにちょっと話を進めていきたいと思います。
ビタミンDの不足がないお子さんが年間8cm伸びていたことに対して、ビタミンDが欠乏していた子は年間7.4cmしか伸びていなかったというデータが出ました。
「0.6cmしか変わらない」と思われたかもしれませんが、実は0.6cmというのはとても大きな差になります。
%にしてみると、7.5%に該当するかと思います。
7.5%が10年など続いていくと、30、40、50、60cmと変わってきます。
例えば、60cmの7%となると4cmになります。
165cmになるのと、169cmになるのとでは、全然違います。
こうしたことからも、ビタミンDはとても重要なことがわかります。
ビタミンDが欠乏している子は屋外で遊ぶ時間が短い
冒頭でもお伝えしましたが、論文のデータでも、ビタミンDの濃度の低いグループは屋外で遊ぶ時間が短いという傾向がありました。
当院も含めてなんですが、都会の皆さんは外で遊ぶ機会はありますか?
この点はすごく悩ましいところかなと思います。
夏の場合だと、都会の子も含めて家族で海に行くなど屋外の活動の機会は多いかもしれませんが、冬の屋外の活動のほうが重要になってきます。
図1
こちらはビタミンDの血中濃度になります。(図1)
赤枠の20~30ぐらいのところが一番高く、40以上ぐらいで低くなってきている結果となっています。
こちらは20以下が欠乏になります。
この血中濃度の結論としては、20以下の子が23%いたというところになります。
後ほどにご紹介しますが、血中濃度は40以上に上げるのが望ましいため、その部分を把握しながら治療を行っていく必要があります。
ただし、一方でビタミンDというのは、脂溶性のビタミンDとなるため、過剰摂取になってしまうと困るという点があります。
過剰摂取すると逆に障害が起きてしまうため、クリニックで血中濃度を把握しながら治療していくというのは重要です。
図2
続いてこちらは月別のビタミンDの血中濃度です。(図2)
2月のビタミンDの血中濃度が一番低い結果となっています。
この点を注意してご理解いただけたらと思います。
ビタミンDの血中濃度を高める方法
続いて、ビタミンDの血中濃度を高める方法についてお話していきます。
ビタミンDについて、皆さんが勘違いしがちのこととして、
「日光さえ浴びていればビタミンDは十分足りている」
ということがあります。
ですが、ビタミンDの血中濃度を高めるためには、以下の要素が重要になります。
- 食事
- 運動
1.食事
ビタミンDの血中濃度を高めるポイントの1つ目は、やはり食事が基本的に重要になります。
特に、キノコや青魚、サーモンなどをしっかり食べると良いでしょう。
また、ビタミンDは、サプリメントの有効性が極めて高いです。
サプリメントは、血中濃度がすぐに上がるものとなかなか上がらないものがあります。
ですが、ビタミンDのサプリメントの場合は、比較的思ったように血中濃度を上げることが可能です。
その理由としては、血中濃度の安定性が高いことにあります。
当院ですと、一般の市販のものよりも何倍も高濃度を使用しています。
また、血中濃度を測りながら経過をみていくため、より正確にコントロールができます。
皆さんの場合そのようにはなかなかできないかと思いますが、子供用のサプリメントで安全を確保しながらやっていく形になるかと思います。
そのなかでも、特に、冬場のビタミンDの血中濃度を保つことは大事です。
2.運動
ビタミンDの血中濃度を高めるポイント2つ目は、運動です。
大前提としては食事が大事になりますが、プラスアルファとして運動も大事になります。
図3
この図を見ると、8~9月のビタミンDの血中濃度が一番高くなっていることがわかります。(図3)
夏場に身長が伸びるとお話されることもありますが、もしかしたらそれもビタミンDの血中濃度が関係あるかもしれません。
ぜひご参考ください。
ビタミンDは身長の伸びにどれくらい影響があるか
それでは、論文のなかで紹介されている実際のデータを見ながら、ビタミンDが身長にどれくらい影響があるのかをお話したいと思います。
ビタミンDの血中濃度の差と身長の伸びの差とは
表1
こちらも、25(OH)D3[ng/ml]というように、ビタミンDの血中濃度が記載されています。(表1)
一番左の部分は10未満とかなり欠乏しており、逆に一番右の部分は40以上と十分にビタミンDがある状況(アバンダー)になります。
今回はわかりやすいデータとして、一番低いデータと一番高いデータを見ていきたいと思います。
表2
続いて赤枠の、「birth height(生まれた時の身長)」という部分を見ていきます。(表2)
・10未満の子=49.26cm
・40以上の子=49.10cm
この結果を見ると、10未満の子の方が身長が高いことがわかります。
表3
続いて、その下にある「At 2 years of age(2歳の身長)」を見てみましょう。(表3)
・10未満の子=83.49cm
・40以上の子=84.34cm
既に2歳の時点で身長が逆転しているのがわかります。
この結果からもビタミンDがやはり重要ということがよくわかるかと思います。
表4
さらに4歳のデータも見ていきましょう。(表4)
・10未満の子=98.5cm
・40以上の子=100.26cm
このように2cmぐらいの差が出ており、ビタミンDが身長の伸びに非常に重要なかかわりがあることがわかります。
ビタミンDの血中濃度は10以下が要注意
続いて、ビタミンDの血中濃度は10以下を避けなければいけないというデータを解説したいと思います。
図4
こちらは年間成長率になります。(図4)
・10未満の子=年間7.34cm
・40以上の子=年間8cm
この結果もかなり差があることがわかります。
40以上の子と比べて、10より高い子とも大きな差はありません。
ですが、ここで注意して見ていただきたいのが、10以下になると急激に落ちているということです。
このように、10以下にだけは絶対にならないように注意しなければいけないということです。
厳密にデータを見ると、このなかでもやはり40以上の子が年間成長率が高いデータとなっています。
こうしたことからも、やはりビタミンDの血中濃度はある程度高い数値で保っていく必要があると推察できます。
ですが、先ほどお伝えしたように、ビタミンDの過剰摂取は要注意になります。
-外での運動がどれくらいデータに影響があるか
図5
こちらはのグラフは、40以上の血中濃度を保たれている子たちは、ほとんどの人が冬場も外で運動していたというものです。(図5)
一方で、10未満の子は、20数%の子たちが外で運動をしていなかったという結果でした。
冬場は外に行く機会が減るかと思いますが、やはりある程度外に行く方が良いということになります。
皆さん、外で運動することが大事ということをぜひ覚えておいてください。
まとめ
今回は、2022年に熊本大学の先生が書いてくださった論文をもとに、以下の点についてお話しました。
- ビタミンDが欠乏すると、7.5%も身長の伸び率が低下する
- ビタミンDの欠乏がみられる子は他の栄養素も不足している
- ビタミンDの血中濃度を高く保つには、食事と運動が重要
- 運動は特に冬場(12~3月)に屋外で行うことが重要
- ビタミンDの血中濃度が高いほど、身長の伸びの割合が高い
みなさん、理解できましたでしょうか?
これからも身長に関することを全身全霊で配信していきますので、身長先生ブログや身長先生YouTubeのチェックをお願いいたします。
成長シートご希望の方は、身長先生の公式LINEからご自身でダウンロードすることができます。
簡単に身長が予測できるようなシートになりますので、ぜひお試しください。
↑2024年2月22日 KADOKAWA出版より発売↑