腕を後ろに回すと痛い原因とは?考えられる疾患と対処方法を解説!
エプロンの紐を結ぶ時やお尻のポケットを触る時など、腕を後ろに回して肩や腕が痛いけど原因がわからない…そんなふうにお悩みの人も多いのではないでしょうか。
実は肩が痛いか、腕が痛いかで原因が違う可能性もあります。
そこでこの記事では、腕を後ろに回すと痛い原因や対処方法について解説します。
この記事を読んでわかること
- 腕を後ろに回すと痛い原因
- 腕を後ろに回して痛い時に自宅でできる対処方法
- 腕を後ろに回して痛い時にする検査・治療
目次
腕を後ろに回すと痛い原因は?
腕を後ろに回すと痛い時、肩が痛いのか腕や背中が痛いのかで考えられる原因が違います。
腕を後ろに回す時に使う関節は肩関節ですが、肩関節自体に問題があるのか、肩ではなく首や神経に問題があるかで症状が違うためです。
そこで腕を後ろに回した時に、肩と腕・背中が痛い時に考えられる原因について解説します。
腕を後ろに回して肩が痛い時の原因
腕を後ろに回して肩が痛い時、肩関節自体に問題が生じている可能性があります。
考えられる原因は以下のような疾患です。
- 肩板損傷
- 肩関節周囲炎
これらの疾患は肩関節の痛みだけでなく、腕が上がらない・力が入らないというように肩関節機能が低下する特徴があります。
肩板損傷は肩を支えてくれる大切な筋肉である「回旋筋肩板」という筋肉が損傷・断裂する疾患です。
損傷は加齢による摩耗や転倒、重いものを持つなどの急激な負荷で生じます。
肩板損傷は損傷・断裂がある部位に激しい痛みを伴うことが特徴です。
そのため、腕を後ろに回すと損傷がある肩に痛みを生じます。
また、部分的な損傷であれば肩は動きますが、完全に断裂すると腕を持ち上げることができません。
そのために生じる、代償動作という動かし方が肩板断裂の特徴です。
肩関節周囲炎は40肩・50肩とも呼ばれる疾患で、多くの場合徐々に進行し明らかな原因がありません。
痛みのほか「拘縮」という関節が固まる症状がみられ、動きが悪くなることが特徴です。
加えて肩関節周囲炎では拘縮で動きが悪くなった肩を無理に動かすことで痛みも生じます。
しかし、時間の経過で痛みが落ち着いていくこともあり、治ったと勘違いする人も多いので注意が必要です。
腕を後ろに回して腕や背中が痛い時の原因
腕を後ろに回して、腕や背中が痛い時には肩自体ではなく、首や神経に問題があるかもしれません。
考えられる原因には以下のような疾患があります。
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 胸郭出口症候群
これらの疾患では肩関節自体には問題がありません。
しかし腕を後ろに回すことで首や胸の神経が引っ張られたり、圧迫される負担がかかることで腕や首•背中に痛みが出ます。
そのため、肩関節の可動域自体は良好であることがほとんどです。
頚椎椎間板ヘルニアとは、首の骨である頚椎の間にある椎間板が変性し、首の後ろにある神経を圧迫してしまう疾患です。
神経を圧迫してしまうため、肩や腕のほか首〜背中にかけて痛みが出ます。
痛み以外にも痺れや筋力低下、感覚鈍麻(皮膚を触られた感覚が鈍くなる症状)といった症状も見られることも少なくありません。
重症例では痙性歩行という歩行障害が見られることもあり、手術も検討されます。
胸郭出口症候群とは首•鎖骨の下•胸のいずれかで神経•血管が筋肉や骨によって圧迫されるために、腕や背中に痛みが生じる疾患です。
神経・血管の圧迫により腕・背中に神経症状が生じます。
痛みのほか、痺れや筋肉の萎縮といった症状も生じます。
また圧迫型と牽引型の2種類があり、さらに神経・血管が圧迫を受ける位置も人によって違うという特徴もあります。
そのため、症状からどのタイプかの見極めが重要な疾患といえるでしょう。
腕を後ろに回して痛い時の対処方法
実際に腕を後ろに回していたい時に、原因に対して対処方法が変わってきます。
ここでは、前述した原因に対してどのような対処方法があるかを解説していきます。
腕を後ろに回して肩が痛い時の対処方法
腕を後ろに回して肩が痛い時には肩関節自体に問題がある可能性が高いでしょう。
そのため、肩関節を動かさず安静にすることが重要です。
具体的な方法としては三角巾があります。
腕を三角巾で吊るし、後ろに回せないようにしてしまえば痛みの軽減が期待できるでしょう。
一時的に固定することで痛みを落ち着かせ、筋力低下や拘縮した肩関節に対してリハビリをし、機能の改善を図る方法が一般的な対処方法です。
腕を後ろに回して腕•背中が痛い時の対処方法
腕を後ろに回して腕・背中が痛い時には神経症状が出ている可能性があります。
そのため、神経へ負担をかけないことが重要です。
そもそも上述した頚椎椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群はデスクワークの人に発症しやすいと言われています。
つまり、同じ姿勢を続けることで首周囲の神経へ負担をかける可能性が高くなるのです。
そのため、適度な運動で首周りや胸の筋肉・関節を動かし、血流を促すことが大切になります。
また、首が前に出るような姿勢ではなくまっすぐ良い姿勢を心がけることも重要です。
腕を後ろに回して痛い時にする治療
腕を後ろに回して痛い時に行う治療は以下に挙げる治療があります。
- 注射・内服薬
- 物理療法・理学療法
それぞれの治療方法を確認してみましょう
注射・内服薬
腕を後ろに回して痛い時に使用する注射は、以下の表に記載するような種類があります。
注射の種類 |
目的 |
炎症止め(ステロイド) |
肩の炎症を抑えることで、痛みや熱感などの炎症症状を抑える |
痛み止め(局所麻酔薬) |
肩自体の神経を麻痺させる注射を打つことで、痛みの軽減を図る |
ヒアルロン酸 |
肩関節に注入することで、肩の動きを滑らかにする |
ブロック注射 |
頚椎から出る神経に向かって麻酔を打つことで、神経症状を緩和する |
これらの注射は痛みの原因疾患に合わせて選択されます。
内服薬では痛みの軽減を図るために、NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛薬やオピオイド薬を使用します。
一般的にはNSAIDsを使用しますが、痛みが強い場合や神経痛、しびれなどの症状もある場合にはオピオイド薬を使用します。
物理療法・理学療法
物理療法とは温熱や電気、牽引・超音波などの機械を使って、痛みの緩和を図る治療です。
肩や首の疾患にも有効で、痛みが出る部位や炎症が起きている部位にあてることで組織の回復を図ります。
理学療法とは運動療法や関節可動域訓練を通して、失った機能を回復する治療です。
腕を後ろに回した時の痛みにも有効で、痛くない動かし方の練習や筋力強化、関節可動域訓練、姿勢を変える練習を通して、痛くない動かし方を練習していきます。
腕を後ろに回して痛い時にする検査
腕を後ろに回していたい時にする検査では、以下のような検査が一般的です。
- レントゲンやMRIなどの画像検査
- 医師による整形外科テスト
画像検査では、まずレントゲン検査で骨の状態を確認します。
レントゲンでは骨折や関節の隙間の広さなどが確認でき、肩・首周りの疾患を診断するために有効です。
骨に異常が見られなかった場合には筋肉や靭帯・神経などに問題がある可能性があります。
これらの軟部組織はレントゲンで映らないため、MRIや超音波で検査します。
MRI・超音波であればレントゲンには映らない軟部組織の損傷や炎症を確認できるため、より詳細な診断が可能です。
これらの画像検査に加えて、医師による整形外科テストを行います。
整形外科テストとは道具を使わない徒手的検査のことで、局所の障害を確認するのに有効です。
画像検査の結果とそれぞれの疾患に対しての整形外科テストの結果を組み合わせることで確定診断をします。
例えば画像所見で頚椎椎間板ヘルニアが確認されても、整形外科テストでは頚椎椎間板ヘルニアのテストが陰性ということもあります。
画像所見と実際に出ている症状を合わせて、はじめて確定診断が可能です。
腕を後ろに回して痛い時は病院に行くべき?
腕を後ろに回していたい時、病院に行くかどうか悩む人もいるでしょう。
結論から言えば、整形外科を受診すべきです。
なぜなら、自分1人で症状を改善させるのは難しいからです。
例えば肩関節周囲炎ではよく1・2年経てば痛みが取れるから病院に行かなくても良いというように言われます。
しかし、痛みが取れたとしても肩の拘縮が残ってしまい、日常生活に支障が出る場合も多々あるのです。
また、肩板損傷など筋肉に損傷があった場合、闇雲に筋トレや肩の運動をしてしまうと、より筋肉の損傷が強くなり症状が悪化する可能性もあります。
このように、状態がわからないまま自己判断すると症状が悪化する可能性があるため、整形外科を受診すべきです。
とはいえすぐに受診しなくても良い場合もあります。
例えば徐々に痛みが進行し、痛みが出た原因がはっきりとしない場合には緊急性がない慢性症状の可能性が高いです。
このような場合には緊急性がないため、すぐ整形外科を受診する必要はありません。
逆に転倒や重たいものをもったなど原因がはっきりしていて、急激に症状が悪化した場合には可能な限りすぐに受診すべきです。
骨折や筋腱断裂など、すぐに処置する必要がある疾患の可能性があるかもしれません。
そのため、原因がはっきりとしていて症状の悪化がひどい時は緊急性が高いと言えるでしょう。
具体的には、以下に挙げるような症状がある場合は注意が必要です。
- 急に腕が上がらなくなった
- 急激な痛み
- 発熱、患部の熱感
- 吐き気
- 肌の発赤
- 腫れ
このような症状と転倒や重たいものを持ったなどのはっきりとした原因があれば、すぐに受診しましょう。
まとめ:腕を後ろに回して痛い時の原因は肩や首まわりの疾患かも?
腕を後ろに回していたい時の原因や対処方法について解説してきました。
ポイントは以下のとおりです。
- 腕を後ろに回して痛い時の原因は肩だけの問題とは限らない
- 腕を後ろに回して痛い時の治療方法は注射や内服薬などがある
- 腕を後ろに回して痛い時には整形外科に受診すべき
腕を後ろに回して痛みがある場合、原因は肩自体の問題だけでなく首や胸の神経に問題があるかもしれません。
肩自体の問題であれば筋力や可動域にも問題が併発しやすく、神経の問題であれば痛みのほか痺れ・感覚鈍麻などの症状が見られる場合も多々あります。
これらは画像検査や医師による整形外科テストで判別が可能であり、治療していけば問題なく改善の期待が持てる疾患です。
しかし放置することで根治に難渋する可能性もあるので、整形外科の受診をおすすめします。
また、転倒や重たいものを持って痛くなったなど、明らかな原因がある場合には可能な限り早く受診してください。
激しい痛みや炎症所見がある場合、骨折をはじめ速やかな処置が必要なケガをしている可能性もあるためです。
とはいえ緊急性の有無に関わらず、肩や腕の痛みを1人で治していくことは難しいことがほとんどです。
痛い時には無理をせず、専門家の判断を仰いでください。
参考
腕を後ろに回すと「二の腕」が痛い…原因は?ストレッチで治る?受診目安も
「腕を後ろに回すと痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
当院では五十肩撃退ブログを執筆しております!
肩の痛みで辛い思いをしている方向けに、五十肩の知識やストレッチなどの改善方法を紹介しています。
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