【膝の痛み】ヒアルロン酸注射のメリットデメリット
「ヒアルロン酸注射ってそんなに何回も打っても大丈夫なの?」「クセになるって聞いたことがあるけど実際はどう?」などと、気になっていませんか?
「痛みがあるけどクセになるから」と、膝の痛みを我慢している方は、最後までご覧ください。
東京神田整形外科クリニック、理学療法士の森祐弥です。
本日は、ヒアルロン酸注射の真実について、3つのテーマでお話していきます。
①ヒアルロン酸の注射のメリット
②ヒアルロン酸の注射のデメリット
③ヒアルロン酸の注射を打つ頻度
①ヒアルロン酸注射のメリット
さっそく1つ目のテーマのヒアルロン酸注射のメリットについて、お話していきます。
まずヒアルロン酸注射の主な効果は大きく2つあります。
①関節のクッション性を高める
②膝の動きを滑らかにする
この2つです。
加齢や変形性膝関節症などでO脚などの変形が進んでしまうと軟骨はすり減り、それに伴いヒアルロン酸も減少していきます。
例えば膝の関節内に炎症が起こると、炎症を鎮めようと関節液がたくさん膝に集まります。
これがいわゆる「膝に水が溜まる」状態です。
この時、関節液の主成分であるヒアルロン酸の濃度が低下します。
その結果、関節のクッション性が低下し、関節の動きの滑らかさも低下してそれが膝の痛みに繋がります。
この時、注射でヒアルロン酸を補うことで、クッション性や滑らかさなど関節の機能を高め、膝の痛みや動き改善され、膝が楽になるといったような効果が得られます。
ヒアルロン酸注射は保険適用されており、週1回を連続5回まで可能です。
その後は2週に1回の頻度であれば、打つことが可能です。
こちらは2017年のソアド氏らの研究です。
写真1
対象者は36〜65歳(平均51.8歳)の変形性膝関節症と診断された患者さんです。
研究方法は、ヒアルロン酸注射群と、コルチコステロイド群(体内の炎症をおさえる薬)の2つの治療グループに分けて、6ヶ月間経過を観察しました。
結果、両グループともに膝の機能改善が見られました。
疼痛指標ではヒアルロン酸注射グループの方が、痛みの軽減に有意な改善を示しました。
まとめますと、変形性膝関節症の機能改善や痛みの改善にヒアルロン酸注射は効果的で、6ヶ月という比較的長期の期間でも痛みの軽減に効果があると言えます。
以上を踏まえ、ヒアルロン酸注射のメリットをまとめると、
①痛みや動きを改善する
②痛みを軽減する
③保険適用が効く
この3つがメリットになります。
②ヒアルロン酸注射のデメリット
次に2つ目のテーマ、ヒアルロン酸注射のデメリットについてです。
デメリットをまとめると
①効果の持続期間は1〜2周間
②何度も打ち続けると組織周辺が悪化
③痛みがかなり強い人は効きにくい
大きくこの3つになります。
1つ目のヒアルロン酸の効果の持続期間についてですが、注射を打つとその直後から痛みが和らぎ始めますので、即効性はあります。
しかしヒアルロン酸は膝の中に入ったあと、やがて分解されて体外へ排出されてしまうので、ヒアルロン酸の効果はなくなってしまいます。
この期間が個人差はありますが、長くても1〜2週間と言われています。
また3つ目の膝の変形が進行し、痛みがかなり強い人に効きづらいということについては、変形具合のグレードを判別するKellgren-Laurence分類というものがあります。
この分類の比較的初期の状態では、ヒアルロン酸注射は効きやすいと言われています。
ヒアルロン酸注射が効かない場合は、再生医療や手術療法など他の選択肢を検討していきます。
③ヒアルロン酸注射を打つ頻度
次に3つ目のテーマ、ヒアルロン酸注射を打つ頻度についてです。
結論から言うと、ヒアルロン酸注射はクセになりません!
なので、先程挙げたメリット・デメリットを踏まえた上で、膝の痛みがある人は週1回をまず5回、その後も痛みが続いていれば2週に1回のペースで保険適用で注射が可能ですので、その頻度で行うことをおすすめします。
なぜかと言うと、膝の痛みを我慢していると機能が低下し、変形が進行してしまうリスクが高いからです。
具体的には膝まわりの組織が痛みや炎症によって硬く緊張し、膝をかばった状態で歩いたり体重をかけ続けていることで、炎症を繰り返してしまうことがあるからです。
リハビリを開始してもすぐに筋力がついたり、適正体重まで落とせるわけではないため、どうしても膝に負担はかかってしまいます。
なので注射がクセになるのではなく、痛みのある状態で膝に無理をかけ続けていることで炎症を繰り返したり、変形が進行するなどの悪化がいわゆるクセになるのだと思ってしまうことに繋がっていると思います。
それよりも、ヒアルロン酸注射を打って膝の動きを滑らかにし、リハビリを行っていただいた方がずっと効果的です。
デメリットにもあった注射を打った周りの組織が硬くなるというのも、リハビリでマッサージしたりほぐしたりすることで改善が可能です。
また持続時間は1〜2週間ですが、保険適用で週1回を5回連続可能で、その後は2週に1回のペースであれば保険範囲内で注射を打つことが可能です。
比較的初期の変形性膝関節症であれば、何度か打つことで症状が改善されやすくなります。
Journal of Experimental Orthopaedicsという海外のジャーナルでは、「ヒアルロン酸注射を週1回を5回行うと膝の痛みや動きが改善した」という報告があります。
また、国際変形性膝関節症学会(OARSI)では、変形性膝関節症の治療方法の推奨度として、最も高いランクに運動療法があります。
写真2
つまり、世界的に見てもリハビリなどの運動療法は症状の改善に効果的であると高く評価されています。
膝に負担がかからないように
①体重を落とす
②筋力をつける
③膝がまっすぐ伸びる
④膝がしっかり曲がる
といった可動域を保つためにはリハビリが必要になります。
ですが、実際に痛みが強い場合は運動をすることが難しいです。
その場合に、ヒアルロン酸注射とリハビリの併用でスムーズに膝の治療を進めることが可能になります。
なので、「注射はクセになるから何度も打つのはやめておこう」と、痛みを我慢している方も、ヒアルロン酸注射とリハビリを併用して行っていただきたいと思います。
まとめ
それでは本日のまとめです。
本日はヒアルロン酸注射の真実について3つのテーマでお話ししていきました。
1つ目のヒアルロン酸注射のメリットについては
①クッション性や動きを滑らかにするなどの機能改善
②痛みの軽減
③保険が効く
主に3つのメリットを挙げました。
そして2つ目のデメリットについては
①注射効果の持続期間は1〜2週間
②何度も注射を打ち続けると組織周辺が硬化
③膝の変形が進行して痛みがかなり強い人は効きづらい
この3つになりました。
しかし①については何度も保険で注射を打つことが可能です。
注射を週に1回を5回連続で打って効果が出た、という文献を紹介させていただきました。
注射の針で組織周辺が硬くなることについては、リハビリで組織を柔らかくすることで対応が可能です。
そして変形が進行し、痛みがかなり強い場合の方には再生医療などの他の選択肢を検討していくことをお伝えしました。
再生医療については、こちらの動画をご覧ください
記事はこちら
>>【変形性膝関節症の再生医療】どの治療を選べばいい?【PRPと幹細胞】
そして3つ目のテーマのヒアルロン酸注射をどのくらいの頻度で打つとよいか、ということについては、結論的にはヒアルロン酸はクセにならないので、痛みがあれば打ったほうが良いということ、そしてリハビリと併用することをおすすめしています。
注射を打たずに我慢して生活することで炎症を繰り返し、悪化することの方が大変ですし、痛みが強いと運動がスムーズに進まないので、注射で痛みや動きを改善しながらリハビリを筋力をつけたり、体重を減らしたり、可動域を改善したりするなどの運動療法を行っていただくことをおすすめします。
いかがでしたか。
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